コントラバスとは?

 まず『コントラバス』という呼び名。よく『ウッドベースとコントラバス、どこがちがうんですか?』と尋ねてくる方がいます。同じ楽器の事をさします。『おはぎ』と『ぼたもち』と同じ、呼び名が違うけど実は同じものを指すのです。クラシックの分野では主に『コントラバス』『ダブルベース』、タンゴやジャズの世界では『ウッドベース』単に『ベース』と呼んだりします。私のCDは『コントラバス』と記載されているので、主にクラシックの作品を収録しているんだなと考えていただけると嬉しく思います。

 

 さて、オーケストラの分野では弦楽器は4種類(バイオリン、ビオラ、チェロ、コントラバス)ありますが、コントラバスはその弦楽器群の中で最低音域を担当します。

 弦も4本と5本の楽器があります。ギターと同じ4度調弦(G-D-A-E-C(H))で、ちょうどバイオリンの調弦と逆の順番です。

 右手に持つ弓の持ち方も2種類あります。バイオリンやチェロと同じ持ち方のフレンチスタイル、もう一つは日本では広く一般的な弾き方のジャーマンスタイル。なぜ日本でジャーマンスタイルが広がったかというと、日本人で最初に海外留学したコントラバス奏者の長汐壽治先生(新交響楽団首席奏者)がチェコ共和国・プラハで勉強され、その奏法(ジャーマンスタイル)が日本に広まったと言われています。コントラバスの教則本で一番メジャーな『シマンドル』というものがありますが、シマンドルの教則本もチェコのものです。

 

 コントラバスはバイオリンやチェロなどに比べて楽器の形・大きさが統一されておらず、様々な形・大きさが混在しています。これはコントラバスが求められる役割が多種多様なため、その役割に応えるべく大きさや形を少しずつ変えていると考えられます。

 例えばオーケストラ。弦楽器群の中の役割として一番低い音を担当するため、通常の四弦コントラバスよりさらに低い方にもう一本減を増やし五弦にして演奏することもあります。また、大きく響きのある音を求められることが多いために楽器もラウンドバックのタイプを使う人が多いです。もちろん楽器製作者や演奏家の嗜好もあるので一概には言えませんが。

 ジャズやタンゴなどでは主に四弦の楽器を使います。ジャズではあまり弓を使わずピッツィカート(弓を使わず指ではじいて音を出す)奏法が多いため、クラシックとは弦の種類(材質・好み)などが違ってきます。またタンゴでは弓の持ち方をフレンチスタイルにして演奏する人が多いです。

 ソロ(独奏)で演奏する場合はハイトーン(高音域)を多用する事が多いため、楽器の大きさをやや小さくし、発音がよく反応が良いフラットバックの楽器を選ぶ傾向があります。

 

 また調弦もオーケストラで用いられる調弦(G-D-A-E)より1音づつ高く調弦して演奏する習慣があります。この調弦方法をソロチューニングと言います。他の弦楽器ではこの調弦方法はあまり用いられません。このソロチューニングはイタリアのコントラバスの名人G.ボッテジーニが考えた演奏法と言われています。ボッテジーニは一番低い弦を使わずに3弦で演奏していました。

 2013年4月20日に発売のCD『モティヴィ/ 榊原利修 ソロ・デュオ集』の録音にあたりバリエールの『チェロとコントラバスのためのソナタ』以外の曲はすべてソロチューニングのコントラバスで収録しています。もしお聴きになる機会がありましたら、音色の違いに耳を傾けていただけると嬉しいです。

モティヴィ/ 榊原利修
モティヴィ/ 榊原利修

自分の使用している楽器

使用している楽器は2つあります。 一つはイタリア製。ラウンドバック、弦長107センチの四弦コントラバスを使用しています。もうひとつはチェコ製。フラットバック、弦長104センチの四弦コントラバス。これは自分がチェコに在住していたときにプラハ在住の楽器職人Andrew Pittsさんに依頼して制作したものです。楽器の製作過程でニスを塗ったり、楽器に使われる木を選ぶところから一緒に参加させてもらいました。楽器の大きさを少し小さくしてもらい、背面を音の立ち上がりのよいフラットバックにしてもらいました。

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製作中の楽器(チェコ・プラハで)