19.ヴァンハルの生まれた故郷『ネハニツェ』vol.1

 今から11年前、チェコ留学中の2003年7月の出来事だ。ちょうど思い立ってコントラバス関係者なら誰でも知っているヴァンハルという作曲家の生家を訪ねたくなった。どうやら、ヴァンハルの生家はチェコ国内のネハニツェという町だということは以前、耳にしたことあった。

 プラハにいる間はヴァンハルの生家を訪れる絶好のチャンスだ。だが、知り合いにネハニツェについて尋ねたのだが、ネハニツェという町は知らないという。地図でざっと眺めてもネハニツェという町は無かった。下宿先の管理人のおばさん(チェコ人)に聞いたが『知らない』の一言で終わり。

 

 『知らない』はチェコ人の口癖だ。しかも日本人のように、おもてなしの心意気で、困っている自分に対し、下宿のおばちゃんが知らないうちにネハニツェについて探してくれた~、下宿のおばちゃん ありがとう、 チェコ大好き~などという希望的観測は、ほぼ0%。自力で意地でも探し出さなければ何も進まない。が、意地でも探すんだというモチベーションよりも留学中の忙しさが勝り、念願のネハニツェ探訪は頭の片隅に追いやられていた。

 

 帰国する1ヶ月前。レッスンも一段落し、現地のチェコ人はバカンスの期間に入った。多くのチェコ人は、このバカンスの楽しい期間を目標に働いているようなもので、いそいそと家族でバカンスの準備をして大都市プラハを離れる。別荘に行く人、海辺のビーチに行く人、 山に出かける人、一日中、 何もしない贅沢な時間を過ごすために滞在先を決めて7~8月、およそ2ヶ月間は働かない。『良いバカンスを』と言い残し、自分の先生もチェコの習慣をしっかり守り、家族でどこかに行ってしまった。

 

 ということで、帰国するまでの残りの1ヶ月間は、日本にいたら行けないであろう、できないであろう、やらないであろう、ということを思う存分やってみよう、と考えた。

 

NECHANICE
赤い部分が ネハニツェ『NECHANICE』

 で、いろんなアイデアを思いつき、あーでもない、こ~でもないと考えていたら、モクモクと頭の中に沸き起こって来たのが、ネハニツェ探訪の思い。改めて、インターネットでヴァンハルの生まれ故郷・ネハニツェについて探してみた。どうやらそもそも探し方が間違っていたらしい。『ネハニツェ』というスペルを間違えて探していたようだ。

 

情けない。気を取り直して検索する。

ふむふむ、ネハニツェはチェコ語で『NECHANICE』と表記するらしい。

今度こそ、いけそうだ、うんうん。と調子に乗って調べて行くと・・・・・・

 

ネハニツェ、ネハニツェ、あ、これこれ、あった。やったぜ。念願のネハニツェだ。

 

どうやって行くのかな?え~っと、プラハから東に約80Km。フラデッツ・クラーロヴェーという町のすぐ近くだ。

 

プラハからだと電車でフラデッツ・クラーロベーまで行って、そこからバスで行けば良さそうだな、ふんふん。

 

下宿していたプラハからは、恐らくそんなに遠い町ではないことに一安心。ということで、ネハニツェまでのルートを大まかに、かつザックリ調べて、とうとう念願のネハニツェ探訪の日がやって来た。(vol.2へつづく)

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