3.パネンカ先生のレッスン

チェスキークルムロフでのリハーサル風景
チェスキークルムロフでのリハーサル風景

 

 

 

 

 プラハ芸術アカデミーでの先生のレッスンは週二回あり、一回のレッスンは45分でした。先生のレッスンは特に、最小限の言葉で最大の効果をもたらす内容だったので、45分というレッスンの時間がとても長く思えました。レッスンを何度か受ける中、パネンカ先生から新たな大原則が与えられました。


1)譜読みをする際に、全てのアーティキュレーション、フレージング、ペダリング、ダイナミクスを含めた状態で読み取り、譜読み1日目から部分に区切って暗譜すること。
2)レッスンで演奏する時は、テンポは遅くても良いが、1)の条件をみたす部分だけを持ってくること。それ以外の部分は先生に聞かせないこと。
3)家での練習中によくミスする箇所を、先生の前やコンサートで弾けるはずはないのだから、全てのミスの問題は自分で解決してからもってくるように、

ということでした。
 

 こうなってくると、今まで自分なりに20年近く続けてきた練習方法や練習の概念を覆し、全く別の練習方法にかえなければなりませんでした。留学中に一番苦労したことは、今までの不適切な練習方法を断ち切る勇気を持つことでした。
 

 ヨーロッパの音楽大学は日本の音楽大学とくらべると、「演奏家としての職業訓練校」としての役割が大きいです。学生は、2年生からは毎年1本リサイタルを行うことが必須で課せられます(日本の音楽大学の場合、2年生でリサイタルができる人が何人いるでしょうか?)。
 社会ではプロの演奏家として、一度に多くのレパートリーを高いレヴェルで持ち続けていることが必要になります、つまり一度にたくさんの曲を仕上げるとなると、1曲に費やす時間は当然のごとく少なくなるわけで、少ない時間で効果をあげる練習方法を確立しなければなりません。
 

 ヨーロッパの音楽大学においては、プロの演奏家として、練習時間を含めた1日の活用法の確立を促し、自覚を育て、舞台人としてメンタルトレーニングされていくのです。そのため、教授陣自身が演奏家としてのキャリアをもった人であることが必須です。
 パネンカ先生の場合、何十年も第1線で活躍して膨大なレパートリーを高いレヴェルでこなしてきました。あらゆる面をバランスよく持ち合わせているからこそ、生徒に何がかけていて、何でつまづき、どう解決したらいいかを的確にアドヴァイスできるのだと思います。ある程度の例外はあるとしても、演奏家にしか演奏家は育てられないと実感しました。